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馬に乗るⅢ―Pia, 1984, Mellach

ンディーは私のことちゃんと分かってくれていたのかな。たぶんそんなことはないと思う。乗馬学校の馬は1日に何人も乗せるし、私のレッスンは週に1回だけだったから、たぶん認識されていなかったと思います。やっぱり、馬にちゃんと自分のことを見分けてもらったり、馬のその日その日の気分が分かったりするようになるためには、毎日馬に会わなきゃいけないんだと思います。一度、両親に、「私も馬が飼いたい」ってお願いしたことがあります。でも、さすがの両親も、それにはいいよと言ってくれなかった。「馬を飼ったらね、毎日餌もやらなきゃいけないし、ずっと面倒を見てあげなきゃいけないし、たくさんお金もかかるし、とっても大変なんだよ、だからやめようね」って。両親の言う通りですよね。でも、その時はやっぱり悲しかったですね。

乗馬学校に通い始めて少し経つと、コオラ Cora という牝馬に乗るようになりました。若い、茶色い馬。この子も大人しい、いい子でした。大好きでしたよ。一度、コオラが売却されるという噂がたって、動揺した私は、「どうしよう、コオラが売りとばされちゃう、もうコオラに会えないかもしれない」って母に泣きついたのを覚えています。結局そんなことなかったんですけどね。マンディーはね、その乗馬学校で一番大人しいから、いつも乗馬が初めての子を乗せるんです。マンディーに乗る機会があまりなくなったのはちょっと寂しかったけど、私はマンディーから卒業できたということですね。

その乗馬学校には10歳ぐらいまで通っていました。でも、ずっと教わっていた先生が辞めてしまったのをきっかけに、次第に足が遠のいて、そのあと乗馬はしなくなりました。馬ってね、すごく暖かいんですよ。馬に乗っているとき、上から首に手をまわして、ぎゅっと抱きしめるのが好きだった。たてがみに包まれて、本当に暖かいんです。そうだ、私が行っていた乗馬学校、まだあるんですよ。Reithof Mellachっていうんです。ほら!これが厩舎で、これがホール、これがアリーナ。もう40年ぐらい経つのに、全然変わってないですね。


インタビュー・文:OKUJI Yukiya