私
が乗馬を始めたのは4歳のころです。グラーツから車で30分ぐらいの、メルラッハという村に住んでいました。小学校はひとつだけあるけれど、中学校はないような、田舎の小さな村でした。家のすぐ近くに乗馬学校があって、横を通るといつも馬がいるのが見えました。私は幼心にどうしても馬に乗りたいと思って、自分から両親に頼んだんです。「お馬さんに乗りたい」って。両親はあれしなさい、これしなさいって私に決して言わない人たちでした。その代わり、私がこれしたいって言うと、いいよって言ってくれた。そうやって、乗馬学校に通い始めました。
私が初めて乗ったのは、マンディー Mandy という白い牡馬です。本当はダイアモンド Diamant っていう名前なんですけど、長いから、みんなマンディー、マンディーって呼んでいました。マンディーは23歳ぐらいだったかな。馬の寿命は大体30年ぐらいなので、もうおじいちゃんですね。絶対に急に動いたりしない、本当に穏やかな馬でした。だから、初めて馬に乗る人にはぴったりで、4歳の私もマンディーに乗せてあげるのがいいね、と先生たちが考えてくれたんです。
4歳の子どもなんて、本当に小さいですよね。でも、だからといって、背の低いポニーに乗るわけではないんですよ。マンディーは普通の大きいウォームブラッドでした。初めてマンディーと会った時、私はマンディーを首が折れるほど見上げて、「なんて大きなお馬さんなんだろう」と思いました。体が小さすぎて自分では馬に登れないので、先生が私をひょいっと持ち上げて、マンディーの背中に乗せてくれました。初めて馬に乗った私は、天にも昇るような気持ちでした。もうマンディーから降りたくない、このままずっとマンディーに乗っていたい、そう思いました。不思議ですね、こんな大昔のことなんてずっと忘れていたのに、今話していて急に思い出しましたよ。
(続)
インタビュー・文:OKUJI Yukiya
インタビュー・文:OKUJI Yukiya