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マキシィⅠ―Pia, 1990, Vasoldsberg

キシィ Maxi はマキシミリアンの愛称で、雄猫の定番の名前なんです。特に凝った名前をつけたわけではないんですよ。マキシィは、灰色のヨーロピアン・ショートヘアでした。要は雑種ですね。マキシィはいつも外をほっつき歩いていました。家の隣のトウモロコシ畑やカボチャ畑で遊んだり、近くを歩き回ったり。よく動物を捕まえて、家に持って帰ってきました。ネズミとか、鳥とか。捕るだけじゃなくて、食べもするんですよ。よく食べかけの死骸が玄関やバルコニーの前に転がっていましたから。ある時、マキシィが自分と同じくらいの大きさのキジをくわえて帰ってきたことがあります。父が、一体何を捕まえてきたんだろうと見ようとして、マキシィに近づいたんです。そうしたらマキシィ、物凄い剣幕で父を威嚇したんですよ。うううううって。横取りされると思ったんでしょうね。ネズミを生きたまま連れて帰ってきたこともありました。家のなかで追っかけまわして遊ぶんです。そんなことは最初で最後だったのに、よりによってその日はお客さんが来ていたんですよ。お客さんもびっくりですよね。

マキシィはそうやって、昼間はほとんど家の外にいて、夜になると家に帰ってきました。夏は好きな時に帰ってきて、家の中に入ってくることができます。田舎の家は昼も夜も戸締りをしませんからね。冬になると、寒いのでドアを閉めます。なので、冬は私たちが寝る時に名前を呼ぶんです。「マキシィ、マキシィ。もう寝るよ、帰っておいで。」そうすると、ひょっこり帰ってくるんです。自分がマキシィだっていうこと、家に帰れば寒さをしのげること、自分の家がここだっていうこと、ちゃんと分かっているんですよね。

マキシィは数日帰ってこないこともしばしばありました。そういうとき、こっちは心配するんですけど、本人は素知らぬ顔をしています。「ちょっと遠回りしてただけだよ」ってね。元気に帰ってこればそれでいいんです。猫を放し飼いにしていると、そうじゃない時もある。隣に住んでいたジェニーの家が旅行に行った時、猫を預かったことがあります。ミンカという雌の猫です。預かっているときに、帰ってこなくなった。帰ってきたジェニーはそれを聞いて、わんわん泣いてしまいました。2週間経って、みんな諦めかけていたときに、ミンカは帰ってきた。薄汚れて、やせ細って、ふらふらして、それはもうかわいそうでした。でも帰ってきただけよかったと思う。シェリアはついぞ帰ってこなかったから。 


(続)


インタビュー・文:OKUJI Yukiya