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マキシィⅡ―Pia, 1990, Vasoldsberg

キシィはよくひっかき傷をつくって帰ってきました。他の猫と喧嘩したりするんでしょう。軽い傷ならいいんですが、一度、右肩にひどい怪我を負って帰ってきたことがありました。車に跳ねられたんだと思います。すぐに動物病院に連れて行ったんですが、思いのほか状態が悪かった。「手術が必要だけど、その手術はウィーンでしかできない」とお医者さんは言いました。私たちはその時ファソルツベルグという村に住んでいて、グラーツは近いけど、ウィーンなんて正直、別の世界みたいなものだったんですよ。「手術できない場合は、安楽死させるのがいい」とまで言われました。安楽死なんて考えられなかった。だから、両親はマキシィを連れてウィーンに行きました。手術は無事成功して、マキシィはまた元気になり、今までと変わらず外をほっつき歩いたり、獲物をとったりするようになりました。伏せた時に右肩をちょっとだけ聳やかすようになったことが、怪我を思い出させる唯一の仕草でした。

マキシィはいつも、自分が一家の主みたいな顔をしていました。当時、バーニーズ・マウンテン・ドッグのジョージー Georgie とキーラ Kira も飼っていたんです。すごく大きくて毛の長い犬です。マキシィはよく、ジョージーのために買った犬用のこんなに大きいベッドに、素知らぬ顔をして寝そべっていました。ジョージーは困惑して母を見上げていましたよ。「取られちゃった、どうしよう」って。

マキシィは本当に自立心が強くて、ジョージーやキーラともそんなに遊ばなかったし、私の両親や弟にもそんなに懐いていなかった。でも、私にだけは違いました。私がマキシィを抱っこすると、頭を胸に摺り寄せてくるんです。「マキシィはピアにしかそんなことしないなあ」って、父は感心するように言いました。マキシィは私のこと、大好きだったんですよ。寝るときも毎晩一緒でした。マキシィは私にとって、初めての猫でした。



インタビュー・文:OKUJI Yukiya