あ
れが有名なプラーターの観覧車ね。『第三の男』は知ってるでしょ。あの観覧車、ちょっとスカスカだと思わない?ワゴンが一個飛ばしについてるからよ。昔はもっとたくさんワゴンがついてたんだけど、戦争で壊されて、半分に減らしたんだって。この遊園地は昔からあったけど、あんな洒落た入り口はなくて、それはそれは寂れた場所だった。さあ、横断歩道を渡りましょう。ここの公園、Venediger Auっていう名前でしょ。昔は水路が走ってて、ヴェネツィアみたいだったらしいね。戦争で壊されたあと修復されなかったけど、今も公園として残ってる。いつも女の人たちが体操とかダンスしてるわよ。あれ、中国の人たちだよね?みんなで集まってて、すごく楽しそう。
この角のスーパー、今はBILLAだけど、昔はMeinlだった。そうそう、あのユリウス・マインル。今はもうあのグラーベンのお店しかないけど、あの頃はたくさん店舗があったの。別に高級スーパーって感じでもなくて、普通のスーパーよ、薄汚れた感じの。オーストリアのスーパーってどこもかしこもなんか薄汚れてると思わない?初めてウィーンに来たとき、ここのマインルでフルカーデ Frucadeっていうジュースを買ったのを覚えてる。オレンジジュースみたいなものね。そのとき付き合ってた彼氏と一緒に、ナイス・ピープル・ショー Nette Leit Showっていうトークショーをウィーンに見に来たの。Hermes Phettbergっていう、すごく太ったコメディアンが司会の番組。Hermesはギリシャ神話のヘルメスで、Phettbergは脂肪の山っていうこと。ゲストに、アルコールだったらエッグノッグ Eggnog、ノンアルコールだったらフルカーデを出すことがお決まりで、私たちも飲んでみたくて探し回ったの、すごくオーストリアの飲み物って感じがしたから。意外と見つからなかったんだけどね。そのときに泊まったのがプラーターで、そのあとウィーンで暮らし始めてからずっと、プラーターに住んでる。
(続)
インタビュー・文:OKUJI Yukiya